がらくた銀河

磯崎愛のブログです。本館は小説サイト「唐草銀河」。

「古典よむ部」ガイドラインです!

先週水曜に「つくるぞ」宣言した「古典よむ部」、発起人のわたしがモタモタしてる間にみなさんドンドン先にすすんでるご様子でめでたい限りでございます*1
なにはともあれ、こんな変な名前の「古典よむ部」にご興味をもってくださってどうもありがとうございます。とってもとっても嬉しいです! 

とりあえず、はてなハイク古典よむ部」を掲示板的に使っていこうかと考えています。


古典よむ部
http://h.hatena.ne.jp/keyword/%E5%8F%A4%E5%85%B8%E3%82%88%E3%82%80%E9%83%A8


ハイクユーザーの方は、このキーワードをご自身の「お気に入りキーワード」にいれてくださると嬉しいです。
ハイカーさんじゃない方は、是非とものぞきに来てくださいねv
以下、活動内容の簡単で暫定的なガイドラインです。


〜個人活動〜

まずは古典を読む。
(何を隠そう、この時点で「入部完了」です。ほら、「古典よむ部」だから!)
次にダイアリーやハイク(ID頁や作家名等のキーワード)に書誌情報や感想などを書く。
はてなハイク「古典よむ部」キーワードで書いた記事のお知らせをする。
(もちろん、こっそりひっそり黙々と活動するのも全然OK!)


〜部員同士の交流〜

気になる記事はすぐさま「古典よむ部」や「古典」タグ等をつけてブックマーク!
記事に☆をつけたりコメント欄に馳せ参じたり、ハイクでリプライしてみたり、はたまた関連記事にはトラックバックを送ったりと、和気藹々切磋琢磨、古典を通じて親睦を深めあいましょう!!


こんな感じで、その方のペースで出来るように考えてみました。
さらに旺盛な活動をなさりたい方は『オヴィディウスの「変身物語」を原典で読む』*2とか『私の好きなモーパッサン』とかお好みの企画等を考えられまして、ハイクにて同好の士を募っていただければ幸いです*3
以下、補足的に。
 
ハイク「古典よむ部」では、古典についての呟きや質問なども受け付けたいと考えています。
「これから鈴木道彦訳『失われた時を求めて』(集英社文庫)の一巻を読みはじめます!」などと宣言して自分を奮い立たせてみたり、「『源氏物語』を読もうと思っています。現代語訳のオススメがあったら教えてください」なんて質問をしたりするような使い方も「部活動」らしくて楽しいかなって。
そのとき、ちょっとおこころにとめておいていただきたいのは、出版社や翻訳者等の書誌情報についてです。*4
ブクマでもおはなしのあったように、「古典」はただでさえ手に入りづらい状況にあるように思います。せっかくの「部活動」ですから詳しい情報があればアプローチしやすくなりますし、「はまぞう」クンをこきつかいましょう(笑)。
いつか誰かが、あなたの大切な本、興味をもった本を同じように感じ、手許に置きたいと願うかもしれない僥倖に想いを巡らして書いていっていただければと嬉しいです。


それと、「古典」の定義について。
前回申し上げましたように、
 

ギルガメシュ叙事詩からジョイスまで! 
つまり、「前世紀以前の書物なら、分野を問わず、すべて古典」。*5
ただし、20世紀の書物については、「次の世紀、さらには「次の千年紀も生き延びてほしい」という個人的な想いのあるもの。

 
って感じでいってみませんか?
念のため、wikipedia情報を以下に抜粋。

古典(こてん)は、古い書物、形式。また、長く時代を超えて規範とすべきもの。

英語のclassic/classical、またはそれに相当する西洋語の単語の訳に使われる。これらの語は、分野によっては、古典派と訳されたり、(classicかclassicalかを問わず)クラシックと音訳されたりすることもある。古典と訳されることのない用語については、#関連項目を参照。

古典の定義は、分野によって、厳密に決まっているものも、あいまいなものもある。あいまいなばあい、その基準は衆知、あるいは(自称)識者の決するところによるため、価値観や世代の違いに影響されやすい。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%A4%E5%85%B8

 
だそうです。
さて、このあたりで何故わたしが「古典に親しむ会」などという如何にももっともらしい呼び名でなく、「古典よむ部」という、ちょっと可笑しな名前をつけたのかお話したほうがいいかもしれません。
ひとつには、「読む」という行為にこの活動を特化したかったためでもあります。
くりかえしますが、いまの時代、読書は個人のモノとなっているように思います。だからこそ、ひとは、本を読むときに社会的な役割をはなれて、完全に、本当の自分自身に返ることができる可能性がある。もちろん、己の立場に照らし合わせて読むこともできましょうしそれにより得るものがあるとも理解できますが、文学というのはいつだってどうしてか「個人」のものであり、その「自由」なり「尊厳」のために書かれているようにわたしには思えるので、まずは「読む」という、ひとりで好きにできる行為をこそ推奨したいのです*6
しかも、「読みとおす」ではなく、純然たる「読む」です。「古典」というのは行きつ戻りつして「読む」に相応しい書物と思います。いま読み通せなくともいつか読み終えることができる本。またはいつかまた読み返す本。幾度でも読み通せる幸福な本。そうしたあれこれが、「古典」に相対する愉楽ではありませんでしょうか?
あと、こんな名前をつけたのは、わたしが照れ屋だという理由もありましょう。わたしごときが「古典」を読む集いの発起人として声をあげるのはなんだか申し訳ないし面映い。さらにいえば、へりくだっているようで、たんに自分の無知無学を恥じて怖気づき、「言い訳」にする卑怯も含まれることと思います。
ただ、わたしが思う「文学」ってやつは、ことに「古典」になりうるそれは、どんなに美しい言葉の連なりで読み手を魅了しようとも、はたまた息もつかせぬ筋運びで自分がどこにいるのかわからなくなるくらいその世界へと意識をさらっていこうとも、しょせんは「高貴なる奴隷」みたいなもんで、こちらが彼奴らのいまする天上の高みを仰ぎ見るような峻厳なモノではあるんですよ。ぶっちゃけ、ゼリーみたいにチュルっと気楽に飲み込めるものじゃなくて、大方は容易に歯が立たないとんでもなく硬い奴、と考えておいたほうが無難なような気がするのです*7
わたしは、学生時代にプルーストやジョイスの本を開いて、怖くなって慌てて引き返してきた思い出があります。
アラフォーの今になってようやく、ゆっくりと、丁寧に、用心しいしい、肩の力を抜いて、それらを読み始めている。そして、あのころ意地になって読まなくてよかったとも思う。時機、というものがあると現在のわたしは信じることが出来るようになったので。
あのときの恐れは、わたしが当時からすでに「書く」ひとであったからかもしれないとずっと考えてきたけれど、今は、それだけではないと感じるようになりました。ひとがここまで深く強くものを考え抜き、書き、伝えようとするその想いや技術に対する純然たる敬意、畏怖の念がわたしを怯えさせ、若さゆえの無謀と申しましょうか、何か学んでやろうと粋がっていたわたしの卑しさをつきつけられて、そこから自分を遠ざけたのではないかと思います。
そんなふうなので、「古典」を読むという行為は、社会的に役立つ、または使える、そういう利便性から遠いことかもしれないとうっすら考えることがあります。それは、功利的なものと酷く相性の悪い何かのようにわたしには思えます。「否、そんなことはない!」と強く言いたい気持ちもあるのですが、わたし、古典よんで世の中の役に立ったことや自分の実人生で得したことって何もナイような気がする(笑)。
それでも読む。
何故か。

面白いから。
楽しいから。
それが、わたしに途方もない愉悦をもたらすから。
でも、それは時にわたしを傷つけ、「読む」ことの困難を教え、知らなくても生きていける何事かを厳かに告げるものでもある。
 

わたしは「古典よむ部」発起人ですから「古典よむとこんないいことありますよ〜」と宣伝すべきところですが、妙なとこだけ正直なんで*8、ウソは言わない。たぶん、そんなに簡単なモノじゃない。
それに、束の間たのしむ「読み物」だけで人生十分に満足できるなら、古典だの文学だのと言い出しません。
 
かつて、「わたしにはまだ、読んでないカルヴィーノの本がある(と、見てないサンドロの絵がある)」と思いながら過ごした日々がありました。〈人生の道の半ば〉にして〈暗い森〉をひとりで彷徨っていたときのことです。いまも森の中かもしれませんが、少なくとも〈先達〉や〈友〉はいるように思えます。
それは、自分からはモノいわぬ、静謐な友。かたわらにあり、手を伸ばして触れてみた途端、雄弁に、または穏やかな声音で語りだす、厳しく優しい真実の美しい友が!
この友は、わたしよりずっと前に生まれ、わたしよりずっともっと永く生きる。
その永い生を、わたしが頼りにしているように、誰かのこころの、魂の、支えとなり糧となって生きている。
「古典」というのはそういうもので、これを読むあなたにも、また新たな存在があなたの人生の傍らにあることをお祈りし、「古典よむ部」が出逢いのきっかけになることを願いつつ――……



羅英対訳詳註『変身物語』を読む〈1〉

羅英対訳詳註『変身物語』を読む〈1〉

*9
 

モーパッサン短編集 (1) (新潮文庫 (モ-1-6))

モーパッサン短編集 (1) (新潮文庫 (モ-1-6))


失われた時を求めて〈1〉第一篇 スワン家の方へ〈1〉 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)

失われた時を求めて〈1〉第一篇 スワン家の方へ〈1〉 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)


全訳 源氏物語 一 新装版 (角川文庫)

全訳 源氏物語 一 新装版 (角川文庫)

*10


ギルガメシュ叙事詩 (ちくま学芸文庫)

ギルガメシュ叙事詩 (ちくま学芸文庫)


フィネガンズ・ウェイク 1 (河出文庫)

フィネガンズ・ウェイク 1 (河出文庫)


見えない都市 (河出文庫)

見えない都市 (河出文庫)

*11
 

神曲【完全版】

神曲【完全版】

*12

*1:すでにしてキーワードいれてくださったり古典よみはじめてる方がおいでです!

*2:ぎゃー、そんな企画やってくださるひとがいらしたら頑張って参加します! 絶対に落ちこぼれますがw

*3:わたしには運営能力が欠如しておりますんですみません。ていうか、この企画名自体にセンスないね。ガックシ

*4:学術論文とは違いますから版や刊行年まで明記しなくともかまいませんが、これから「古典」を読む方がアプローチしやすいよう、その点はご留意のほどよろしくお願いします

*5:burieさん、要約ありがとうございます。

*6:強制されて本を読むなんて、そんなのなんか変って思うんですよね。まあ、学校とかはそういうものなのかもしれないけど。わたし、快楽主義者だからなあ。

*7:どうせあいつらエベレストみたいにタカビーなんで、裾野はひろ〜く取りたいんです! ゆる〜く、したいんです!

*8:小説かいてる人間なんで、「嘘をつく」のがお仕事ですw

*9:いつか手にとってみたいと思いつつここに貼る。

*10:表紙綺麗なのを選んでみましたv って、いや、だって、選ぶの難しい……

*11:迷ったけど、わたしの初カルヴィーノを。前は「マルコ・ポーロの」ってついてたんだYO!

*12:完全版ってなんだ、完全版って、うう……