猫神さま――夢日記19
(写真はお友達のお猫様)
転職した。接客業だ。新しい職場で朝礼のとき挨拶して頭をさげたところで床に毛むくじゃらの塊が見えた。
ん?
気づいたのはわたしだけではない、人事のひとも、あ、と声をあげた。
みな固まっている。
毛むくじゃらは猫の手に見えた。ザリザリかりかり音がする。配線とか色々あるだろう場所を引っ掻いている。引っ掻いて、というか、どうにかして上に出たがっているようだった。
「○○さん! ほら、引っ張ってあげて」
「え、え???」
「ほら、早く!」
人事のひとに急かされてしゃがみ、猫の手に恐々手を伸ばす。こわい。爪があるし、それに、だって、ここビルなのに、やだ。
「○○さん」
こんどの声は怒っているように聞こえた。初日から叱られたくはない。周囲はざわざわしてるけど、誰も驚いてはいない。なにこれ、ドッキリとかそういうの?
触ると、猫の手は、ほんとうにただの猫の手だった。爪は立てられなかった。というか、一本つかんだら、二本目が飛び出してきた。前足、まえあしか、うん。て思う間に、頭が出た。おおおおおっという歓声が起こる。よかった、とりあえずほっとした。しゅるりとカラダ全体もそろった。ふつうの猫だ。ふつう、の???
「えっと、あの」
膝下に擦り寄られて困惑する。
人事のひとは、ほうっと溜息をついてわたしを見た。
「うちの会社、たまにね、こういうことがあるんです。猫神さまに好かれる新人さん、害はないですから、あと仕事中でも見つけたら足を掘ってあげてください。そのままにしておくと埋まったままでうるさいんですよ、あと入社三年も経てば飽きられますから、それまでの辛抱です」
「は、い……」
わかりましたと言っていいものか判断がつきかねるわたしの足にはまだ、猫がひっついている。
「あの、これ」
「邪険にしちゃ駄目ですよ、祟るそうです」
ひぃっと喉から声が出そうになった。
人事のひとは、にいっと笑う。冗談です冗談、とりあえず社員証のお渡しとかあるのでついてきてくださいと背を向けた。
猫はまだ、わたしにひっついている。
餌とかあげたりしないといけないのかしら、可愛いけど、そういう問題じゃないんだよ、とぶつくさ思いながら歩き出したところで猫がミャアと鳴いた。
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圧倒的な犬派なんですが、猫も好きです。
というか、動物はきっと好き。怖いこともあるけど。
夢は実はもうちょっと続いて、猫三匹くらい掘ってたんですが(三毛と、茶色いのと黒いの)、どうもわたしいつまでも怖かったみたいで(そりゃ会社の床から猫が出てきたら怖いさ)、このへんでやめときます。
たまには猫の本を。
シリーズ大好きすぎて子供のころ、彼らについていきたかった。
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どっちかっていうと、猫様にはこういうイメージ、あったりする(幼いころの読書は恐ろしいぞ)