がらくた銀河

磯崎愛のブログです。本館は小説サイト「唐草銀河」。

「眼の澄んだ美貌のヴァリニャーノ」と「尾張の大殿(シニョーレ)」――辻邦生『安土往還記』

美貌のヴァリニャーノ、ていう言葉が好きすぎて好きすぎて、ていう、

これを初めて読んだ当時の十代のわたしw

ん十年たっても「燃えた」ので、そういうとこはほんと変わらんなあと。

 

 何度目かわからない再読。

きのう病院の待合室でひらいて読み終わらなかったので夜また読んだ。

冒頭で、かの有名なルイス・フロイスの『日本史』と来歴やその歴史的価値などを比較されながら紹介される古写本(書簡)の翻訳――という体裁の小説なのですよ。

安土往還記 (新潮文庫)

安土往還記 (新潮文庫)

 

 実在する回想録や書簡の翻訳というかたちで提出される小説(虚構)って世の中にたくさんあるとおもいますが、そういう意味でもすごく正統派で、わたし好みなんだよねえ。

主役、というか書簡の書き手は「航海冒険者の系譜に属する人物」。

このへんの、時代とその視点の位置取りも凄く好き。いえ、辻さんに、こういう「好み」を教わった、とかんがえるほうが自然かもしれないなあと思いつつ。

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なんか、あまぞんのかすたまーれびゅーって正直よんだりしないんだけど、

あ、これ、みんな高得点でとても嬉しかったのではっておきます。

わたし辻邦生さん、大好きなんで!!!(つじのじがでないんだよね、すみません)

あ、あと、

こんなのもあったのではっておくね。

安土往還記―The signore (JAPAN’S MODERN WRITERS)

安土往還記―The signore (JAPAN’S MODERN WRITERS)

 

 

歴史小説、ていうふうに括られるものがあるとして、そのなかでひとつの理想とするのは辻邦生さんなんだよなあとあらためておもったりして。

背教者ユリアヌス (上) (中公文庫)』がチョー大好きだし最高傑作だとおもってるんですが(まだ読んでない辻さんの小説が幾らかあるのに決めちゃうの変ですけど、でも)、

わたしの初・辻邦生作品は『安土往還記』なので。

 

そうそう、これ、

いま、現代語訳とかあるのね。

現代語訳 信長公記 (新人物文庫)

現代語訳 信長公記 (新人物文庫)

 

 いい時代だよね~。

 

ところで、

『安土往還記』のなかで、「美貌のヴァリニャーノ」て何回かかれてるんだろうって数えたくなったのは秘密だ! の、ヴァリニャーノのこれ、

じつは読んでないのだった。はっとく。

(いや、大学図書館で借りた記憶はあるのだけど、ちっとも覚えてないのでアレだ)

日本巡察記(東洋文庫 229)

日本巡察記(東洋文庫 229)

 

そしてフロイスは当時、手にとったおぼえがあるんだけどでも、やたら長くてどっかで読むのやめたんだよねええ(←根性なし)。

いま、読みやすそうなの出てるから、こういうのからよんでみようかなとおもってメモる。

フロイスの見た戦国日本 (中公文庫)

フロイスの見た戦国日本 (中公文庫)

 

 

 

忘れてたわけじゃないけど、そっか、まだルネサンスとよばれる時代のはなしだったね。信長とあの時代の日本のはなしとするよりは、ある一貫した主題というか思想というか、つまりはルネサンス期をくぐりぬけてきたひとびとのはなしとして理解するほうがしっくりきた。ていうか、ブログを書こうとして改めて読んだ巻末解説(饗庭孝男著)にも似たようなことがかいてあってわらったw(←忘れてた。でもたぶん、初読時のわたしはそういう読みをしなかっただろうと思われるので書いておく。まだマキャヴェッリも読んでなかったはずだ。どちらかというと、西と東それぞれの、己の天命に衝き動かされて生きるひとびの孤独な魂の邂逅、その記録、みたいな印象のほうが強かった)

あと、イエズス会の活動についてはなんかやっぱりどこかでちゃんと読まないとなあとおもってるのも告白しておきます。何度も書いてますがw 

 

それと、いまのわたしの「気分」というのもあるとお断りしながら、

書き手に描写される信長、そしてヴァリニャーノといったある種似通った非情やら高潔やらを備えているひとびとの言動よりも(そちらはすでに頭にはいってしまっているという理由もあったにせよ)、そうでない者として描かれたひとびとの凡庸と善にも悪にもなれない怠惰やら狡猾やらが身にしみた。年を取ったせいなのか何なのか。そういうもののほうが見慣れているし、身の内に抱えこんでいるせいなのか。

 

そうそう、これを言わないと。

わたしのなかで信長というひとは第六天魔王という呼び名ではなくて、「尾張の大殿(シニョーレ)」がいちばんしっくりくる。たぶん、大河ドラマとか他の小説とかよりこのはなしの「信長像」がじぶんのおもってるイメージに近しかったしこれに固定化された、ていうことなのだろうなあと。

小説って面白いなあとしみじみと。