がらくた銀河

磯崎愛のブログです。本館は小説サイト「唐草銀河」。

三島由紀夫と巌谷小波、そして鴎外。おまけに谷崎と太宰。でいいかしら?

御伽噺は何でも読んだ。小波の世界童話集を何冊も読み、三重吉の世界童話集も何冊読んだか知れない」三島由紀夫「ラディゲに憑かれて−−私の読書遍歴」より

三島由紀夫のフランス文学講座 (ちくま文庫)

三島由紀夫のフランス文学講座 (ちくま文庫)

 
巌谷小波は日本初のこどものための物語「こがね丸」を書いたひと。わたしが、生まれて初めてよんだ「文庫本」である。このせいもあってなのか、わたしは今でも犬が好き。犬の出てくるおはなしがとても好き。
しかしあれ、たしか、小波弱冠二十歳だか二十一だかの作品なのよね。早熟すぎるYO!w

まあ、そういう嫉妬と羨望はおいて。
当時わたしは6歳で、まだ漢字がさほど読めず(こども向けの本はたいていルビがふってあったから無問題!)、母に一章の途中くらいまで鉛筆で仮名をふってもらった。が、ほんとに初めだけのところを鑑みると、わたしはたぶん、母親にルビを頼む時間と手間が煩わしく、ちゃっちゃとひとりで読みすすんでしまったものらしい(母もそう言っている。まあ、本さえ与えておけばおとなしい子だったからね)。そういえば、父から教わった、ほぼ唯一と言っていいほどに稀で、ちゃんとわがものとなった助言は「読書百遍意自ずから通ず」であった。辞書を引いてもいいが、前後の文章を熟読し判断しろって意味でもあった。たしか、齢七つのことである。
ちなみに、青空文庫

こがね丸 巌谷小波
http://www.aozora.gr.jp/cards/000981/files/3646_12287.html

素晴らしい! 面白いし、読みやすい。
(わたしの文がたまに五七調で続くのは、このへんに根っこがあるに違いない)
なるほど、この量なら、先が知りたくて読みたい子どもは待てないよね。
(あと、なんていうかこう、『白い戦士ヤマト』とか、なんだっけ、熊と犬が戦うマンガ、あれとなんか似てるよね? 似てませんか?)
家のどこかにある本が見当たらないのではってみた。
ここには鴎外の名があるのもまた、一興。

と書いて、思い出した。
三島の鴎外論は、夜中に書いたラブレター的に「素敵」なので、それもオススメ。あれは笑える。ほんっとおおおに笑えるけど(わたしは段落毎に爆笑の連続であったことよ)、でも、「大好きな鴎外先輩カッコイイ素敵とっても愛してるー」な由紀夫さんが、可愛くてシュキ☆


作家論 (中公文庫)

作家論 (中公文庫)


世間一般でいうと、この本の読みどころは谷崎大ヘンタイ、否、谷崎大先生へ向けての情熱の限りを尽くしたテクストにあろうが、それはあまりに著名だし、あまりにもあまりにもアマリなので、ねー(何いってるの、わたしw)。
けど、鴎外は「カッコいい」よね。たしかに。それは認める。大いに!

ところで。
上記「フランス文学講座」で、太宰を「ふにゃふにゃな文体」といって罵倒してる由紀夫さんですが(ちなみにコンスタンの『アドルフ』を引いてのはなしである。あれは読むといたたまれなさすぎな小説で、でも、イイよね?)、わたしの思うところでは、由紀夫さんの娯楽小説系の文章だってそうとうヌルめに書いてる自覚はあっただろうに。というか、だからこそ、なのか。
人間ってやつは、そのへんがしみじみと「面白い」のであった。まる。